サイフォンの原理により始動時のみ電気を利用し、高低差のある土砂ダム・天然ダムでサイフォンの原理を用いて排水を行う装置です。流通しているサクションホースに専用フランジを取り付け、また、専用部材を用いて排水を行います。
サイフォンによる送水時においては、燃料を一切使用しないため、従来の燃料を使用する水中ポンプ単独の排水方法と比べ大幅な燃料費の縮減が可能となります。
土砂ダムの排水においては、長期間にわたる作業のため燃料費が莫大な費用となります。また、燃料の運搬においても労力、費用が膨大となります。それらを解決し、安全に、安価で、長期にわたり排水作業を実施するために開発されたのが「ハイブリッド・サイフォン送水装置」です。
地震や豪雨によって山が崩れ、川が塞がれるとそこに水がたまり、大きなダムが形成されます。土砂ダム、天然ダムを呼ばれるそのダムは、崩れた土砂のため脆弱であり、また水がとめどなく増え続けます。増え続けた水はついには、ダムの頂点を乗り越え流れだし、その流れだした水は川をせき止めている土砂を削りながら流れていきます。
せき止めていた土砂が流れる水と共に削られていくと、土砂ダム、天然ダムに溜まった水の質量に耐え切れなくなって一気に崩壊します。そうなると鉄砲水となり、下流域の人々の生命、財産に甚大な被害を生み出します。
従来は土砂ダム、天然ダムが形成されると水中ポンプを用いて排水を行っていました。しかし、土砂ダム、天然ダムが形成されるほどの災害が発生していると、道路網が寸断されていることが多く給油作業が困難になります。実際に中越地震では、土砂ダム、天然ダムまでの道路が寸断され陸路による燃料運搬が不可能であったため、ヘリコプターによる空輸作業が実施されました。
しかし、土砂ダム、天然ダムの排水には、大量の水中ポンプ、発電機が必要でありその使用する燃料は1日ドラム缶50本を超えるものでした。しかもその運搬はヘリコプターによるものであり、ヘリコプターの運用費用も掛かります。結果、土砂ダム、天然ダムの崩壊は防ぐことができたものの、その費用に膨大な費用が発生してしまいました。
国土交通省では、中越地震の教訓を踏まえ平成27年度次世代社会インフラ用ロボット現場検証において、土砂ダムにおけるサイフォンを用いた排水技術についての技術募集を行いました。
山辰組には、長年研究してきたサイフォンによる送水技術のノウハウがあり、この技術募集に応募をしました。書類審査を経て、豪雨災害で土砂ダム、天然ダムが形成された奈良県吉野郡十津川村の栗平地区にて実証が行われました。
実際の土砂ダム、天然ダムを想定し200mmのサクションホース30本、総延長280m、揚程7m、水頭差(水面から吐出し口の落差)にて実証実験を行いました。結果、サイフォンの作用による送水で毎分3.8m3の吐出し量が確認されました。
現場での検証も踏まえ、次世代社会インフラ用ロボット現場検証委員会 災害応急復旧部会にてハイブリッド・サイフォンは技術認定をされました。
ハイブリッド・サイフォンは流通しているサクションホースと専用部材の組み合わせで組み立てが可能です。ボルト・ナットで部材を繋ぐだけですので特殊な技術は不要です。
また送水作業では、まず水中ポンプで水を送り、1分程送水した後に水中ポンプの電源を切るとサイフォンによる送水に切り替わります。発電機の電源のオン、オフのみでサイフォンによる送水が起動できるので誰でも簡単に操作が可能です。
装置に規格は2種類あります。これは、初期対応と本復旧作業が始まった場合などの状況に応じて使い分けるためです。
直径200mmの装置は、土砂ダムの付近まで重機や運搬車両が接近できる段階での使用を想定しています。本復旧作業が始まり、長期にわたり排水作業が行われる場合において、燃料費の大幅な縮減が可能となります。
直径100mの装置は、全ての資機材が人力で運搬が可能です。土砂ダム、天然ダムが形成され、重機や運搬車両が近づけない場合においても人力で運搬し、サイフォン排水作業を起動、排水を実施することが可能です。
※以下の画像は、直径100㎜の装置をため池に設置する際に撮影したものです。画像クリックで大きな画像が見れます。
ハイブリッド・サイフォンによる燃料の削減効果は、一般土木工事の水替で確認されています。全国各地のダム改修工事やため池の水抜き、また、豪雨が予想される前にため池の水を事前放流するための装置として採用されています。
直径200㎜のハイブリッド・サイフォン装置の採用事例として、代表的な実績が二つあります。ひとつは水力発電をしているダムの工事にて、小水力発電のための取水口ならびに発電設備を改修している間、用水の確保をする必要がありました。
直径200mmの配管を80m×6本設置しサイフォンによる送水を実施しました。6か月間、サイフォンによる送水を実施することで、用水に必要な水量を確保しつつ、燃料を消費しないサイフォンによる送水作業を実現しました。結果、従来の発電機を用いた水中ポンプによる発電比較し、約7,000万円の燃料費の縮減を達成しました。
ハイブリッド・サイフォンの採用実績は多数ありますので、実績の詳細は別サイトである、株式会社山辰組 環境事業部 ハイブリッド・サイフォン送水装置のページにてご確認下さい。
右のリンク先をクリック下さい。 株式会社山辰組 環境事業部 ハイブリッド・サイフォン送水装置
豪雨災害や地震等、災害はいつ発生するか分かりません。事前の備えも必要ですし、また、発災後の迅速な対応が求められています。山辰組では、土砂ダムの排水はじめ一般土木工事における用水確保や水替作業、またため池の水抜き、事前放流装置としての設置等、ハイブリッド・サイフォン送水装置の利用についてご相談を受け付けております。
設置の図面作成、必要な資材の数量、費用の見積もり、製作から納品までの期間の相談、現地での設置指導などあらゆる事柄に対応します。お気軽にお問い合わせ下さい。
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